「令和6年度第1回医道審議会 医師分科会医師専門研修部会資料3シーリングに関する研究の報告」では都道府県、プログラム選択理由に関するアンケート調査の結果が公開されています。このアンケートは2020年度~2023年度に専門研修プログラムに登録した専攻医を対象に行われました。19の基本領域の専門研修プログラムに登録した専攻医が対象で、既にプログラムを修了した者も含まれていました。 有効回答数は15,857名、有効回答率は46.3%でした。
診療科、都道府県、プログラムの選択について
医師免許を取得し、専門医を目指す医師にとって、専門領域、研修を行う都道府県、そして具体的なプログラムの選択は、医師としてのキャリアを大きく左右する重要な岐路となります。「令和6年度第1回医道審議会 医師分科会医師専門研修部会資料3シーリングに関する研究の報告」の資料に基づいて解説していきたいと思います。
1. 診療科(専門領域)の選択
専門領域、すなわちどの診療科を専門とするかという決定は、医師としてのアイデンティティを確立する上で重要な決断になります。専門領域選択の理由として最も多く挙げられたのは「やりがいを感じるから」 (62.6%) でした。これは、医師に限らず仕事内容の選択において「やりがい」は重要な要素であると考えられます。次に多かったのは「将来にわたって専門性を維持しやすいから」 (36.6%) でした。専門医としてのキャリアを長期的に見据え、専門性を活かして働き続けられる診療科を選択する傾向を反映しているものと思われます。

個々の診療科ごとに診療科の選択理由をみると診療科によって重視される理由が異なっています。以下に、いくつかの診療科の例を挙げ、それぞれの選択理由の特徴をみていきたいと思います。
内科:「やりがいを感じるから」が57.0%、「将来にわたって専門性を維持しやすいから」が44.9%と高く、おおむね全体の結果と同じような傾向です。
小児科: 「やりがいを感じるから」を選択した割合が86.0%と非常に高く、他科と比較して「やりがい」を重視する傾向が顕著です。小児医療に対する強い使命感や、子どもたちの成長に貢献したいという思いが、この結果に表れていると考えられます。
臨床検査科: 「将来にわたって専門性を維持しやすいから」の割合が37.3%と最も高く、将来的なキャリア展望を重視する傾向が強いことが伺えます。臨床検査という専門性の高い分野で、安定したキャリアを築きたいという考え方が反映されているのかもしれません。
外科: 「やりがいを感じるから」 (77.7%) と並んで、「生命に直結するから」 (26.3%) を選択した割合も高く、外科医としての責任感の強さが伺えます。
精神科: 「やりがいを感じるから」 (57.9%)に加え、「患者とコミュニケーションを取る機会が多いから」 (25.5%) を選択した割合も高く、患者との深い関わりを求める傾向が強いことが分かります。
麻酔科: 「ワークライフバランスの確保ができるから」 (59.7%) を選択した割合が最も高く、労働時間や生活の質を重視する傾向が強いことが分かります。
このように「やりがい」、「将来にわたる専門性」が最も重要視しされています。また各診療科に対する興味や関心の強さ、専門性を活かしたキャリア形成の可能性、そして診療科特有の労働環境や患者との関わり方なども考慮して専門領域を選択していると考えられます。
2. 都道府県の選択理由:出身地、出身大学、希望する医療機関・プログラム
専門研修を行う都道府県の選択は生活環境や将来のキャリアプランにも影響を与える重要な要素です。このアンケート結果によると、「出身地の都道府県だから」という理由が32.1%と最も多く、出身地への愛着や慣れ親しんだ環境で研修を受けたいと考える医師が多いものと推測されます。

次に多かったのは「自分の希望に最も沿った医療機関・プログラムがあるから」 (31.3%) でした。専門医を目指す医師は、自らのキャリア目標に合致する医療機関やプログラムの存在を重視し、研修環境を慎重に選択していると考えられます。
また「出身大学のある都道府県だから」 (31.1%) という理由も、都道府県選択において重要な要素となっています。出身大学との繋がりを維持することで、研究活動やキャリア形成において有利な環境を得られると考える医師もいるでしょう。
さらに「医師不足地域での医療に貢献できるから」 (3.6%) を選択する医師も一定数存在します。地域医療の現状を理解し、医師不足の地域で貢献したいという強い意志を持った医師がいることを示しています。
3. プログラムの選択理由:充実した内容、指導体制、症例経験
専攻医はどのような理由で専門研修プログラムの選択したのでしょうか。このアンケート結果によると「専門研修プログラムの内容が充実していること」が48.6%と最も重要視されており、専門的な知識やスキルを効果的に習得できるプログラムを求める声が大きいことが分かります。

次に重視されているのは「優れた指導者がいること」 (41.7%) です。指導医の量や質は専門研修中の成長に大きな影響を与えるため、経験豊富な指導医のもとで研修を受けたいと考える医師が多いと考えられます。
また「豊富な症例実績があること(量・質)」 (27.1%) も、プログラム選択の際に重視される要素です。多様な症例を経験することで臨床能力を高め、専門医としての実力をつけたいという意欲が反映されていると言えるでしょう。
4. 専門研修修了後の希望進路
プログラム選択は将来のキャリアパスにも影響を与えます。このアンケート結果では専門研修修了後の希望進路として「専門研修を受けた医療機関の関連医局に入局(継続の場合を含む)」が57.1%と最も多く、研修を受けた医療機関でキャリアを継続することを希望する医師が多いことが分かります。

まとめ
この記事では専攻医としての診療科(専門領域)の選択理由、専門研修の都道府県、専門研修のプログラム、専門研修修了後の希望進路について2020年度~2023年度に専門研修プログラムに登録した専攻医を対象としたアンケート結果について述べました。皆様の進路決定の一助になるかはわかりませんが、ご参考にしていただければ幸いです。



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