はじめに
医師としてのキャリアにおいて大きな節目となる「専門医試験」。2018年度の新専門医制度開始から7年が経過しました。この記事では各診療科の合格率の推移をみていきたいと思います。
各診療科(基本領域)の専門医試験の合格率の推移
日本専門医機構が発行している「日本専門医制度概報」から基本領域19診療科+総合診療の合格率推移を分析しました。ご指定いただいた資料(専門医制度概報2018年〜2024年版)に基づき、基本領域専門医試験の合格率の推移についてまとめました。
内科については専門医制度の変遷に合わせて「認定内科医」「内科専門医」「総合内科専門医」に分類しています。なお外科専門医については選考の主軸となる「予備試験」の結果を記載しています。
| 専門医名称 | H29 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 | R5 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 内科 内科専門医 | ー | ー | ー | ー | 94.4% | 90.0% | 85.3% |
| 内科 総合内科専門医 | 60.0% | 72.1% | 65.4% | ー | ー | 71.9% | 87.4% |
| 小児科専門医 | 80.3% | 82.7% | 78.2% | ー | 82.1% | 78.1% | 80.0% |
| 皮膚科専門医 | 76.1% | 78.8% | 80.1% | 80.5% | 82.7% | 80.9% | 81.1% |
| 精神科専門医 | 71.7% | 68.6% | 66.3% | 69.3% | 72.5% | 72.4% | 74.9% |
| 外科専門医 | 81.2% | 82.2% | 82.0% | ー | 90.3% | 97.0% | 96.9% |
| 整形外科専門医 | 89.2% | 89.7% | 89.4% | 97.4% | 92.3% | 90.4% | 89.4% |
| 産婦人科専門医 | 85.8% | 84.4% | 86.9% | 86.9% | 86.7% | 87.0% | 86.6% |
| 眼科専門医 | 82.0% | 79.2% | 74.1% | 79.0% | 66.9% | 90.6% | 94.5% |
| 耳鼻咽喉科専門医 | 79.0% | 80.6% | 81.7% | 83.9% | 83.5% | 88.5% | 88.4% |
| 泌尿器科専門医 | 78.1% | 80.4% | 84.0% | 91.6% | 94.6% | 92.8% | 84.0% |
| 脳神経外科専門医 | 78.0% | 77.0% | 76.6% | 80.5% | 82.2% | 83.0% | 78.0% |
| 放射線科専門医 | 86.2% | 85.0% | 93.5% | 89.2% | 93.3% | 93.9% | 89.6% |
| 麻酔科専門医 | 81.6% | 78.0% | 74.0% | 83.2% | 72.3% | 71.6% | 76.1% |
| 病理専門医 | 82.6% | 82.0% | 80.0% | 93.4% | 83.8% | 80.2% | 83.3% |
| 臨床検査専門医 | 87.9% | 69.6% | 88.2% | 85.0% | 83.0% | 83.3% | 87.5% |
| 救急科専門医 | 67.1% | 73.8% | 91.4% | 83.3% | 89.3% | 90.1% | 89.8% |
| 形成外科専門医 | 89.6% | 90.8% | 83.6% | 86.5% | 89.9% | 92.5% | 93.4% |
| リハビリテーション科専門医 | 88.0% | 89.5% | 92.5% | 84.3% | 98.4% | 92.0% | 90.6% |
| 総合診療専門医 | ー | ー | ー | ー | 89.2% | 88.8% | 89.9% |
| 基本領域専門医の平均 | 71.1% | 76.9% | 75.0% | 85.9% | 86.5% | 87.2% | 85.7% |
※外科専門医は予備試験の数値を採用。
※内科(新制度)は令和3年度より開始。
※令和2年度は新型コロナウイルスの影響により専門医試験が延期・中止となったものがあります。
内科の大きな変革:新制度の「内科専門医」の登場
内科領域では「認定内科医」から新制度下の「内科専門医」へと移行が進んでいます。 新制度の「内科専門医」試験は令和3年度から始まり、当初は94.4%という極めて高い合格率でした。しかし令和5年度には85.3%となっています。一方でより高度な専門性を問う「総合内科専門医」は依然として6割〜8割台で推移しておりやや変動が大きい印象です。
コロナ禍で試験中止・延期のあった令和2年度
データを見ると令和2年度(2020年度)の合格率に「ー」が並ぶ診療科が目立ちます。これは新型コロナウイルス感染症の拡大により、内科、小児科、外科といった診療科で専門医試験の延期や中止を余儀なくされたためです。この影響により令和2年度に受験予定であった受験者が令和3年度に受験者が集中し専門医試験の合格率に影響を与えた可能性があります。
基本領域の合格率の差
診療科によって合格率の傾向は分かれています。 整形外科や産婦人科、放射線科などは、多くの年で8割〜9割以上の合格率を維持しています。精神科や麻酔科は年によっては7割台前半まで合格率が下がることもあります。
新たな「総合診療専門医」の誕生
新制度で新たに新設された「総合診療専門医」は令和3年度から試験結果が報告され始めました。合格率は約9割と高く地域医療を支える新たな専門医が着実に誕生しています。
まとめ
全体平均を見ると合格率は70%台から80%台後半へと緩やかに上昇・安定しています。これは単に試験が易しくなったのではなく、日本専門医機構が統一基準で認定する「研修プログラム」による専門医研修が機能している結果と考えられます。


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